(注意:記事文中の「献体」は「検体」の誤り)
2006/5/23 プレス発表されました。

この程,科学技術振興調整費平成18年度のうち,重要課題解決型研究等の推進  (1) 重要課題解決型研究 の中の「安全・安心で質の高い生活のできる国の実現」というテーマのうち,課題3−1 国民の健康障害に関する研究開発 について

大槻が,代表となり取りまとめて提案させていただきました

「アスベスト関連疾患への総括的取り組み」

を採択していただきました。

兵庫医科大学 呼吸器RCU科 中野 教授(副代表)
同  呼吸器外科 長谷川 教授
同  病理学 辻村 教授
同  呼吸器RCU科 福岡 助教授
国立がんセンター 情報研究部 西本 室長
兵庫県立成人病センター 岡田 診療科長
愛知県がんセンター 関戸 分子腫瘍部長
京都大学医学研究科 豊國 助教授

で,チームを組みました。
本邦のアスベスト使用料・輸入量から推定される,今後40年前後に渡って増加することが懸念されている悪性中皮腫症例。潜伏期が30〜40年と考えられていることから,あるいは,既に潜伏期に入ってしまわれているかも知れない症例・・・それらの症例に対して

症例登録と,それを基盤とした臨床試験の実施によって治癒率向上を目指すこと。
また,基礎研究から,将来の治癒率向上を目指した早期診断指標の確立と,治療と予防の新展開に向けた標的分子の同定の努めること

を,今回のプロジェクトの中心に据えております。


アスベスト問題は,昨年夏のクボタの問題より,医療医学分野のみならず,国民の健康障害に対する不安の大きな要因となってしまいました。勿論,このような問題が表出する以前より,今回のメンバーの先生方は,アスベストによって惹起される疾病・病態の解明と,その成果を臨床応用するすことにより,発症された方々に対して,少しでも福音になれば,という気持ちで従来臨床や研究に携わってこられた方々です。

今回は,科学技術振興調整費という形の委託を受け,これまでの成果をより発展させて,アスベスト起因性疾患,中でも悪性中皮腫を発症されている,あるいは今後発症されるかも知れない方々へ,治癒率の向上を目指した臨床ならびに基礎研究を推進することで,気持ちを一つにして,向かって行こうと思っております。

勿論,アスベストに関する問題は,非常に多面的であり,今後の曝露軽減に対する対策,あるいは,代替製品の健康障害の検証の問題,診断技術向上に関する問題〜その中にも,画像診断の問題やあるいは医師の教育の問題,もしくは,血清や血液細胞などを用いた診断技術の問題,などなどが,具に想起できます。

この中で,我々のプロジェクトは,将来の治癒率向上・・・現在は,まだ十分な治癒率が得られていないのも偽り難い現状ですので,その向上を目指すこと,つまり,今後,もし中皮腫発症がわかったとしても,最終的には,「治りますよ」と云える時代を目指して,その礎を築いていく,最初の一歩を踏み出そう! ・・・を,目指し,そのための早期診断技術の開発や治療法の科学的根拠に基づいた成績の提示(Evidence-based medicine: EBM です)という面に集中して検討を進めていこうということです。

今後は関連の多くの方々のご協力をお願いしていくことになろうかと思います。また,アスベスト問題を他の視点より検討されてらっしゃる国内外の研究者の先生方とも,良い協力関係の中で,アスベスト禍に苦しむ方々への福音を求めてご意見を伺い,協力し合うことが肝要と思っております。

何卒,宜しくお願いいたします。